…11月のどんづまり
明日から年末の繁忙期(でもないか、不況だから)だってのに、
僕は寒さを楽しんでるとしか思えないカップルでいっぱいのラゾーナ川崎に居た。
もちろん、バチバチ22の会場である。
…ビルの谷間から食いかけのリンゴみたいにやせ細ったお月様がのぞいている。
川崎の夕景は夜のてっぺんの深い闇夜と水平線の黄道光のグラディエーションだ。
福山雅治は空と海の青の違いに涙を流すらしいが、
とたけけはこういう黄道光の消える間際に光と闇が溶け合った夕暮れ空が好きです…。
まだ泣くわけにはいきませんが
そして今回、空よりも僕を落ち込ませているのは、いつも立ち寄る蒲田のタバコ屋が閉まっていた事です。
お気に入りの葉巻セットが買えなかった。
いつもの安らぎである喫煙室に入ることができなかった。
しょーがないんで、スタッフのフナコシさんの近くでなんとなくうろちょろしていた。
会場はそこそこ込んでいたが、雰囲気がアウェーである。
バトラーツ絡みの人間がいないだけじゃない。
でも知ってる人間が少ない会場にいるってのはそれだけで、淋しいもんですな。
しかし、場所的には良く見える。
この辺は北千住と川崎の違いかなあ。
さて、いつものイケダタクヤ「東へ行く」でバチバチスタート!
そして選手入場です!
イケダさんが考えたのか、キャッチフレーズを付けながら各選手を紹介するのですが、
中でも特に面白かったと思ったのは
”バチバチ巡礼”野橋真実
”バチバチ王子”フジタ”Jr”ハヤト
”ジャンボマックス”石川修司
そうそう、ハヤトはあの因縁の?ホワイトTシャツ着てたな…。
代表して挨拶したのは野橋選手。
さて、ようやくバチバチ22の開始です。
◎第1試合 ホワイト森山復帰戦 30分1本勝負
○佐々木恭介vs×ホワイト森山 (11分54秒スリーパーホールド)
待望のホワイト森山プロレス復帰です。
池田大輔と組んで闘ったタッグ戦で、フジタ”Jr”ハヤトの膝蹴り(ヘルム)を顔面に受け病院送りになり、それからなかなか復帰できずにようやく立ったリングです。
今回は同じU-STYLE出身の佐々木恭介を相手に闘いました。
闘うというより胸を借りる感じになってしまったのは、復帰戦としては仕方がなかったのか?
腰を引いたようなファイティングポーズも力強さを感じさせにくいのはマイナスだ。
打撃も関節技もうまいのに、守勢に回ると弱々しく見えてしまう。
極論すれば、強そうに見えないのだ。ホワイト森山という選手は。
少なくとも、まだ、今の彼は頑張ってる姿が観客にアピールするような段階だ。
だから些細な攻撃で観客は「暖かい」声援を贈る。
そういう声援は佐々木恭介には飛ばない。スタイルは違うが木村浩一郎だってそうだ。
強いヤツは時に憎々しいもんだ。
それが、ホワイト森山にはない。
僕は残念で仕方がない。オープニングで真っ白になってしまう好青年、
いわゆる「いい人」である彼のポジションが、悔しくて仕方がない。
でも、この日、森山は頑張った。憎々しい相手である佐々木選手に対して、
ある種なりふり構わず闘った。
蹴りも出た。張り手も出た。そして頭突きを見せた。
この頭突きは物凄いもので、仕掛けた当人もめまいを起こしたくらいである。
それが失笑を受けるのは仕方がないか。
結果は予想通り、森山は負けた。スリーパーでレフリーストップ負けだった。
この日の観客は、満足した第一試合だったろう。
ホワイト森山は真っ白になって頑張った。
その頑張りは観客に受けた。
ただ、今日の彼の頑張りは
「頑張れ、オレ!」ってヤツだ。
「頑張る事」がこの日の目標であるようだった。
僕は森山選手に厳しいだろうか?
こう言いたいファンだっているかも知れない。
「仕方ないじゃない。この日が復帰戦なんだから。(佐々木恭介に)勝てるわけないじゃない。よく頑張ったよ。ホワイトは。」
そう言って抗議したい人もいるかも知れない。
でもさ、勝たなくていいよ、って応援するのは闘う当事者にとって侮辱じゃないの?
どんなに不利な闘いでも、どんな手を使っても『勝て』と祈るのがファンってものだろう?
どんな形でも森山には勝って欲しかったし、勝てそうな場面を見せて欲しかった。
言わなくてもいいのに、中休みの時、森山選手に余計な事を言ってみた。
「すごく頑張ってた試合だけど、『頑張れオレ』って感じの試合だったよね」
すると彼は頭を下げたのだ。
「すいません。今はできることをやってるのが精一杯で…」
違うんだよ。森山さん。
その気のよさを、カバーする逞しさが欲しいんだよ。
僕の言った言葉にムカついてくれてもいいから。
「次は勝ってみせますから!」ってムッとした顔で言ってよ。
僕はそれまでホワイトを追うよ!迷惑だろうけど。