・メインイベント
石川雄規&澤宗紀 vs 長井満也(無我)&関本大介(大日本プロレス)
石川雄規は言っていた。
「興行の印象はメインで決まる。
セミまでがしょっぱかったら、メインでひっくり返す。
セミまでがすばらしかったら、メインはそれ以上のものを見せる。
それがメインを任された者の使命だ。」と。
この日、4人並べて明らかに、「軽い」澤宗紀を、石川はメインの主役に抜擢した。
いや、メインのタッグなら今までもあった。
しかし、この日の試合は澤のメインイベンターへのテストマッチではないかと思われるくらい、
彼を突き放した。
「俺の方を見るな!」
師匠は弟子に、この日必要以上の試練を与えた。
肉体が規格外の、「レスラーは怪物」を体現する関本大介。
彼がかつて石川に手も足もでなかった事を懐かしく思い出した。
そして関本は澤選手の再デビュー戦の相手なのだ。
その時手も足もでないでアルゼンチンで担がれて負けた澤が、あれからどこまで近づいたか?
そしてリングスの系譜に連なる長井満也。
でかい、重い、蹴りも関節技もたぶん澤より上だ。
澤はこの2人の巨人を相手にどうしたか?
滅茶苦茶にぶつかったのだ。
そして相手の技をひたすら耐え抜いたのだ。
何度関本のチョップやラリアットを胸やのど元に食らっても、
何度長井の重い蹴りを顔やどてっ腹に受けても、
ブレーンバスターで投げられ、ボディスラムで落とされ、
トップロープから関本の巨体のスーパーフライをまともに受けても、
師匠、石川の延髄斬りを誤って食らっても、
彼は時間いっぱい耐え抜いた。
この試合は澤宗紀が相手の技だけではなく、観客の自分に向けられた大きな期待と、
この興行を担う責任を耐え切るために与えられた時間だったのではないかと思われた。
ある時期、池田大輔選手は、自分が期待する選手の一人である澤について
「何かが足りない」「忘れたものがある」といったニュアンスの発言をしていた。
最近なかなかスッキリ勝てなかった。後味の悪い負け方もした。
彼が苦しんで、見つけてきたひとつの結果がこの試合に出たと言えないだろうか?
ゴングが鳴らされた。
時間切れ引き分け
この試合結果に落胆した観客はおそらくいなかったろう。
試合が終わり、澤は立てなかった。
対戦相手だった長井が引き起こし、握手を求めた。
いい笑顔だった。
澤をあえて助けず任せきった石川選手もいい笑顔だった。
関本は笑っていなかった。
彼だけはは満足していないに違いない。
…ノーサイド
こんなシーンが以前にもあった。
池田大輔がグロッキー状態の澤を引きずり起こして握手したシーン。
思わず、また泣きそうになった。
でも、今回は耐えた。
ガース・ブルックスの曲を聴きながら、
彼はまだまだ、もっと大きな感動を僕にくれるはずだから。
会場を後にする客にあいさつする、バトラーツの未来を担う男に
僕は大きな期待をしている。
期待しても、いいかな?
澤宗紀よ…