さて、そんな竜司興行
暗闇の中で明るすぎるくらいのスポットに照らされて試合開始。
第一試合
×成田吉駿(チーム竜司ウォルター) vs 石川雄規(バトラーツ)○
Bルールと銘打ち、5エスケープしか許されない、
サブミッションレスリングスタイルの一戦
一見つまらなく見えるかも知れないが、
言ってみれば、プロレスラーにとっては本当の根っこにあるべきものであり、
付け焼刃では運ばれしてしまう怖いルール。
なんたって自分のレベルそのものが、リングに現れてしまうんだから。
学生柔術王者という肩書きを持つ成田選手、体格もよく、
関節技にも強く、だからこそのBルールだったんだろう。
彼にとっては腕試し的なこの試合。
そして彼の対戦相手にとっては、何のメリットもない試合だ。
確かに竜司選手の言うとおり、そんなリスキーな試合を受けるのは、
石川雄規しかいなかったろう。
実際、彼はそのような試合をしてみせた。
確かに成田選手は、柔術の選手らしく、
ポジションの取り方や関節技の回避の方法とか、
よくわかっていた。
ポイントは成田、石川双方が2ポイントを取り合い、
最後に石川選手が成田選手からタップを奪った。
成田選手にも終盤見せ場があった。
たぶん悪い試合ではなかったと思う。
成田選手にはよく頑張ったと言いたい所だ。
それでも、この1週間前にBルールトーナメントを見ていた僕(ら)にとって、
成田vs石川の試合はスパーリング程度のものにしか見えなかった。
石川選手の技のかけ方、受け方、かわし方、
全てに一拍置いた余裕が見えるのだ。
ギリギリのところでの鍔迫り合いみたいな凌ぎ合いが感じられなかったのは、
残念だけど、力と技術の差なんだろう。
「まだ入り口ってところだな」とは石川選手の成田評。
彼がNORI選手のように、総合格闘家とプロのリングに上り続ける道を選ぶなら、
先物買いしてみたいと思う。
ただ、プロってあくまでも感性だから、
美容師の学校を卒業しても、お客さんがつく美容師になれるのは少ないだろうし、
ましてや、メディアに紹介されるようなカリスマ美容師になるのは、
本当の一握りなんだから。
みんなそれで苦労をしているわけなんでしょ?
その意味で成田選手について言えば、
これからというレベルでしたね。
よく、こんな事書くと
「上から目線のオタクの癖に」みたいな批判を受けるわけなんだけど、
これは金払って見に来ている人間が直に見たうえでの感想なんで、勘弁してもらいたい。
金払って会場にくるわけでもなく、専門誌の結果記事とかネット情報から、
適当に拾って偉そうに言ってるつもりじゃないんです。
まちろん、成田選手とは、試合後の打ち上げで正直に試合の感想を申し上げ、
握手もさせていただきました。
でかい手でした。
第二試合
○長井満也 vs 矢野啓太×
さて、そのBルールトーナメントを優勝した矢野啓太選手の登場です。
新宿の若手ホストみたいな?業界内ではイケメンらしいケイタが挑むは、
でかくて痛くて怖い長井満也選手。
ケイタにないもの~体格と試合経験と重い打撃技~をいっぱい持ってる長井選手。
長井選手にないもの~というかケイタにしかないもの~は発想かな?
試合当初は、体格と勢いでドンドン押す長井選手が立て続けに2回エスケープを奪う。
もちろん、これはバトラーツルールなんで、フリーエスケープ。
何回逃げたっていい。
ただ押されぎみの試合に新宿の客は苛立ってくる。
「いけ~、やっちまえ」
「何かやってみせろ」
「負けんじゃねー」
さすがにこの前みたいに「殺せ」はなかったけど、
打撃に押されて劣勢に回ると若いケイタはひ弱に見える。
これとて声援というやつだ。
普段バトラーツやバチバチ見てるから黙ってみる癖がついているだけで、
もう少し盛り上ってもいいかも知れない。
「ほらぁ、打って来いよ!」こんどは長井の怒号が響く。
ケイタがエルボースマッシュを打ち上げる。
カチ上げ気味のドリーファンクJrタイプのものと言えば頭に浮かべてくれるだろうか?
対して長井選手は背が高いから、うちおろし気味のエルボーを、パンチみたいにぶつけてくる。
これがまた重い。
これは、ケイタのスタイルなんだけど、
エルボーを打つ前に一回相手の胸板をポンとたたくんだね。
これがドリーっぽいなあと毎回思うんだけど、
その一方で、ドリーのエルボーの記憶はもう薄い。
これってね、
「さあ、いくぞ」的な合図みたいなものを感じてしまうから
目に見える威力が薄く感じられるのは損。
ケイタはエスケープを取られた後、重いキックでダウンをもらった。
その後エスケープを立て続けに取るが、
なかなか長井城は崩れない。
健闘むなしく
最後には足固めで敗戦。
その終わり方が少しはっきりしなかったり、長井選手の技がわかりにくかったせいか、
会場内には「なんだ、これで終わりかよ」的な空気が流れたのは少し残念だった。
矢野啓太のいいところ…なのかわからないが、
正面から当たってダメだったら、他に何かやってやろうという姿勢があるところ。
「あーだめだぁ」と周囲の誰もが思ってもあきらめないで、
足を引っ掛けてでも相手を倒そうとするところ。
まあ、誰でも持ってなきゃいけないものなんでしょうけどね。
そういう意味ではこの日セコンドにいた吉川選手もリング上の矢野選手も同じ。
今、観客の目には情けなく写る姿も、やがて頼もしいものに変わっていくんだろう。
後姿を見ながらそう思った。